皆さん、『中華そば』は好きですか?
中華そばを頼んで、テーブルの上に商品が届くと、食欲をそそる醤油の香りと心が踊る豪華な顔ぶれのトッピングが乗っています。
チャーシュ・わかめ・煮玉子・メンマ・もやし・・・
皆さんは、どのトッピングが好きですか?
「チャーシュ」という多くの声が脳内に聞こえきます。
しかし、残念ながらこの記事では、豪華なトッピングの中でも目立たない「メンマ」を取り上げてご紹介していきたいと思います。
メンマって何?
メンマの正体って何だろうかと疑問に思ったことはないですか?
あの不思議な食感に、縦縞模様から正体に想像が付いている人もいいと思います。
そして、その正体を知るためには原料を知らなければなりません。
では、原料は何でしょうか。
パッと見た感じは『竹の子』っぽいですよね?
あってはいるのですが、皆さんが知っているその辺りに自生している竹の子とは違うのです。
実は、竹にはいくつかの種類があります。
日本によく自生している真竹が分類される温帯性タケ類(単軸型)、メンマの原料になる麻竹が分類される亜熱帯性タケ類(準連軸型)、インドで自生しているマイナーなメロカンナが分類される熱帯性タケ類(連軸型)です。
そうです。
メンマは、中国南部や台湾、ミャンマーなど亜熱帯性地方に自生している『麻竹』といわれている鎌で簡単に切ることができる竹を原料としています。読み方は『マチク』と読みます。
最高で20m~30mまでにも成長するらしいです。怖いですね。
つまり、メンマの正体は『麻竹の竹の子』なのです。
シナチクとメンマの違い
今回の記事のメイントピックはここからです。
読者のおじいちゃんとおばあちゃんの中には、未だにメンマのことを「シナチク」と表現する人も多いのではないでしょうか。
確かに、先程、メンマとシナチクは同じものと言いました。しかし、明らかに商品などにも「メンマ」と書かれているんですよね。「シナチクとは言わないで」という雰囲気を醸し出しながら。
では、シナチクとメンマの違いとは何なのでしょうか。
この謎を解くために、シナチクとメンマの違いの由来を語源から紐解いてみたいと思います。
麺の上に乗ったシナチクとの出会い
台湾に在住していたある1人の男性が横浜中華街を偵察しに来たときの話です。彼は、麺の上に焼豚やシナチクが乗っていることにとても感動しました。
なぜ、感動したのか。
台湾ではシナチクのことを『筍干(スンガン)』と呼び、水で戻して、煮たり炒めたりするときに使うのが一般的で、当時の中華料理には焼豚やメンマなどの具を乗せる麺料理がありませんでした。
日本のシナチクの使い方に感動した彼の名前を『松村秋水(まつむらしゅんすい)』と言います。後に、丸松物産株式会社の会長となるシナチクをメンマと名付けた張本人です。
そうです。
当時は『シナチク』と言っていたのです。メンマとシナチクは同じ食べ物だったんですね。
では、なぜメンマと呼び名を変えることになったのでしょうか。
台湾で貿易商をしていた松村氏が、日本が中国経由で輸入した自社製品が煮物や炒め物という食べ方から変化して、ラーメンの上に乗っかっていることに衝撃を受けました。
そうです。
ラーメンの上に乗っていたシナチクは松村氏が卸すシナチクだったのです。
そして、松村氏は決断をします。会社を日本に移し、日本に直接輸出しようと。
これが丸松物産株式会社の誕生の瞬間です。
しかし、順調にシナチクが普及をしていた最中の終戦後に問題が起きます。
メンマ誕生の瞬間
台湾と中国との対立関係から、松村氏の会社に対して、台湾政府から「『台湾産』なのに(輸出表記名が)『SHINACHIKU』とはどいうことだ!」という抗議がありました。
そこで松村氏は考えました。
考えた結果、「麺の上に乗せる麻竹」だから『メンマ』ということにしようとしました。
これがメンマの誕生の瞬間だったのです。
しかし、『メンマ』と似た名前の整髪料があったため商標登録することができませんでした。
これが昭和20年頃に『シナチク』から『メンマ』に変化した理由です。
そうです。時の歴史が原因で『メンマ』と名前を変えることになったのです。
『メンマ』という呼称が普及した理由
時は流れ、昭和40年代半ば頃から『メンマ』という名前が普及し始めます。
味付けメンマが、1953年5月に株式会社大門の創業者である南郷龍男によって開発されます。『しなたけピリ辛中華味』という商品です。初めての味付けメンマの誕生です。
そして、メンマが一躍有名になったのは1968年の桃屋が『味付けメンマ』を発売し、テレビCMで宣伝したことによって広く普及したと言われています。
シナチクって呼ぶと差別になるの?
よく『シナチク』と呼ぶのは差別になるというお話を聞いたことはありませんか?
これは、旧国名に起因しているのです。
シナチクの『シナ』は、『支那』と書きます。
この『支那』というのは、中国のことを指し、蔑称として使われている言葉になります。
したがって、差別になるということです。
「なるほど。だから、中国のことを意識していた台湾が過敏に反応したのか」となるはずです。
最後に
家の冷蔵庫を覗くと、たまたまメンマがあったので、今回はメンマを取り上げました。
私自身、色々と調べると驚くことも多かったのですが、皆さんはどうでしたか?
メンマってどうやって作るのだろうかと思った人もいると思うのですが、詳しくご紹介しているサイトがあったので、敢えてご紹介しませんでした。
今後、メンマを見たら「あー、外交を意識して名前が変わったんだな」と思いながら食べてみてください。
今日は、このあたりで終わりたいと思います。