医学を発展させた感染症の歴史

医学を発展させた感染症の歴史 世界史
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2020年。

新型コロナウィルスが世界的に大流行しました。

世界での死者は3000万人を超え、たくさんの死者を出した感染症です。

クルーズ客船「ダイヤモンド・プリンセス号」が入港し、日本でも大流行を始めました。

日本での死者は1,495万に達し、感染症数は78,000人を超えた感染症です。

 

このような感染症によるパンデミックは、歴史上、世界にも目を向ければ何度も起きています。

今回は、その過去にも起きた感染症のパンデミックをご紹介していきたいと思います。

感染症とは

今回の記事で取り上げる感染症とはなんでしょうか。

風邪やインフルエンザのような病気だと考えている読者が多いのではないでしょうか。

もちろん、その考え方で正解です。

 

もっと正確な定義を理解して、記事の続きを読んでみましょう。

感染症とは、病原微生物ないし病原体が人や動物の体や体液に侵入し、一定の潜伏期間を経たのちに発症する病気の総称です。

 

伝染病という言葉もありますが、伝染病は感染症とは違います。

違いは、『伝染性』を持つ感染症のことです。

100万年前【人獣共通感染症】

この頃は、まだまだ『原人』といわれていた時代です。

 

原人は、狩猟と採取によって食べ物を獲ていました。

動物はたくさんの菌の保菌生物です。

その狩猟によって獲た動物を経て、人獣共通感染症に罹患していました。

 

その他にも、結核、ヘルペス、コレラ、チフス、ハンセン病、住血吸虫症、炭疽症、ボツリヌス症といった感染症が発生しました。

人獣共通感染症とは、蚊やハエなどが媒介となり、マラリア、フィラリア、出血熱、水痘、狂犬病などの動物にも人にも共通して感染する感染症のことです。
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20万年前【人獣共通感染症】

現代の人の直接の祖先に繋がる「ホモ・サピエンス」が誕生しました。

 

原始時代の人々も、原人と同じく狩猟採取で食料を獲ていました。

親族などで数百人規模のコミュニティを形成しながら、狩猟採取できる食物が無くなれば、新たな地を目指して移動していました。

 

そのため、大規模なコミュニティを形成することはないので、感染症は大流行することはありませんでした。

また、常に移動する生活なので、感染症の原因となる糞便に触れる機会も少なく、感染症になることすらが少なかったと考えられています。

現代から見れば、原始時代は不潔な上に不健康だと思われがちですが、衛生的的で健康的な生活だったと推察することができます。

 

ただ、狩猟採取した動物の肉を食べるので、人獣共通感染症には罹患していました。

 

100万年前と生活環境が変わらないので、罹患する感染症はあまり変わりません。

1万年前【人獣共通感染症】

この頃から人は、農耕を始めます。

いいですか?農耕が始まるということは、「我が家」を作り定住が始まるということです。

 

20万年前は、常に移動をしていたから感染症になりにくかったのです。

反対解釈をすると、定住が始まると感染症になりやすくなるということです。

 

当然、様々なコミュニティが定住をすると、人も増え密集状態が形成されます。

その上、1つの場所に長く留まるわけですから、環境状態は悪化し、糞便処理しないといけなくなるので、糞便に触れる機会も多くなります。

食べ物の余剰分とネズミ

農耕が始まると食べ物の余剰分が生み出されます。

倉で保存していても、ネズミなどの小動物の餌となり、ネズミの体に付着しているノミやダニは感染症の触媒です。

ペストは、ネズミのノミが広めました。

野生動物の家畜化

牛や馬を家畜化することで、効率よく耕作面積を広げました。

さらに、家畜の糞便は大事な肥料となり、酪農も可能としました。

 

しかし、その喜びの裏には感染症を増やす原因も孕んでいました。

家畜化された動物の持つ病原体が、家畜作業中に人に感染したりしました。

例えば、天然痘は牛の感染症麻疹は犬の感染症インフルエンザはアヒルの感染症です。

 

このように、腸管感染症、呼吸器系感染症、麻疹、天然痘、風疹などの感染症が発生しました。

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紀元前2000年頃【天然痘】

「人類初のパンデミック」が起きます。

農村部から徐々に侵略をしてきていた天然痘ウィルスは、富が蓄積され、多数の都市を形成し、不特定多数の人々が集まり行き交う場所に辿り着きました。

そして、その場所で爆発的感染を起こします

そうです。今でいう「クラスター」が形成されていた場所で感染が起こるのです。

このことは、現在でも有名な「世界最古の文学史」にも叙述されています。

ギルガメッシュ叙事詩

世界四大文明の1つであるメソポタミア文明で、著者不明の「世界最古の文学史」といわれている物語が残っています。

ギルガメッシュ叙事詩』です。

その物語の中に、「大洪水よりもましな4つの災いの1つある。それは、エッラ(疫病)だ」と叙述されています。

このエッラ(疫病)が、天然痘ではないかといわれています。

紀元前430年

古代オリエントを滅亡させるかの如く猛威を振るった天然痘ですが、オリエントと貿易をしていた西へと勢力範囲を広げていきます。

一番酷かったのは、古代ギリシャです。

古代ギリシャの都市国家アテナイ(アテネ)で爆発的な感染を起こし、アテナイの重鎮であったペリクレスが天然痘に罹患し、死亡しました。

 

この天然痘ですが、世界人口の3分の1を死へと追いやり、歴史上の初の「パンデミック」を起こしました

しかし、一方で、人類が唯一、根絶した感染症でもあります。

紀元前1157年【天然痘】

新王国時代の古代エジプトの王ラムセス5世のミイラに、天然痘の痕跡が見つかる。

 

ラムセス5世の時代は、エジプト内で暴動が起きたり、リビア人によって襲撃起きたりしました。

大変、大きな困難と立ち向かいましたが、ラムセス5世自身も天然痘に罹患し、在位4年で亡くなられました。

紀元前412年【インフルエンザ】

現代では、「医学の父」や「医聖」と呼ばれる天才的な医師が古代ギリシアにいました。

現代医学でも有効とされる数々の医術を開発し、資料を残しました。

彼の名を「ヒポクラテス」といいます。

 

「ある日突然に多数の住民が高熱を出し、震えがきて咳がさかんになった。たちまち村中にこの不思議な病が拡がり、住民たちは脅えたが、あっという間に去っていった」

 

と、そんな医聖・ヒポクラテスがインフルエンザと考えられる情報を残しています

ちなみに、インフルエンザと名付けられたのは中世のイタリアです。

542年~543年【ペスト】

東ローマ帝国でペストが大流行します。

ペストはこれまでに3度もパンデミックを起こしています。

そのうちの第1次が東ローマ帝国で起きた『ユスティニアヌスのペスト』と呼ばれるパンデミックです。

 

この第1次ペストパンデミックは、8世紀までの長きに渡り治まることがなく、東ローマ帝国衰退のきっかけになりました。

 

ユスティニアヌスとは、当時の東ローマ帝国を統治していた王の名前です。

1020年

イスラームを代表する医学者であったイブン・スィーナーが、感染症の伝染性を発見しました。

つまり、世界で初めて『伝染病』を発見したということです。

イブン・スィーナー

イブン・スィーナー

彼は、著書である『医学典範』に「隔離が感染症の拡大を止め、体液が何らかの天然物によって汚染されることで感染性を獲得する」と記しています

そうです。この時には既に隔離が有効であると分かっていたのです。

14世紀(1301年~1400年)【ペスト】

第2次ペストパンデミックが起きます。欧州では、「黒死病」と呼ばれました。

 

イスラームの学者であるたイブン・アル=ハティーブが、衣類・食器・イヤリングへの接触が発症の原因であることを発見しました。

 

欧州では、2500万人から3000万人が亡くなり、この人数は欧州人口の4分の1にあたるといわれています。これは、イギリスやフランスでは過半数が死亡したと推定されています。

また、世界でも8000万人から1億人が亡くなりました。これは、世界人口の3分の1にあたります。

1918年~1919年【スペイン風邪】

スペイン風邪のパンデミックが起きます。

中国から渡来した病に感染したアメリカ人が、第一次世界大戦で闘ったことで、爆発的な流行を起こします。

 

世界人口の半分である12億人の半数が罹患し、4000万~5000万人が死亡したといわれています。

1928年

イギリス人細菌学者であるアレクサンダー・フレミングが青カビから世界初の抗生物質ペニシリンを発見します。

第二次世界大戦では多くの兵士を感染症から救ったといわれています。

日本ではドラマ・仁で一躍有名になりましたよね。

2020年【新型コロナウィルス】

現在進行系でパンデミックを起こしている感染症です。

来年こそオリンピックができる環境が整うことを願っています。

最後に

このように世界へ目を向けると、人類の歴史と共に感染症と戦いました。

その度、たくさんの人の涙と血と汗を流し、悲しみに包まれながらも対策を講じ、抗い、戦い抜いてきました。

今回の新型コロナウィルスも収束する日が来るのを願ってやみません。

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私が一度読んでいる本の中から、ここまで読まれた方が読んで面白いと思える本をご紹介します。

本の好みは千差万別でありますが、是非、皆さんに読んでいただきた本です。

感染症だけなく、病気全体の歴史が俯瞰できる本です。

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