皆さん、『がんす』って食べたことがありますか?
つい最近まで全国的な食べ物だと思っていたのですが、広島の名産だったらしいです。
今回はそんな『広島がんす』の歴史に迫ってみたいと思います。
がんすとは?
がんすは、魚のすり身にピリ辛唐辛子や玉ねぎを混ぜ合わせた練り物に、パン粉をつけて揚げる揚げかまぼこです。
ピリ辛で味もあるのでそのまま食べても美味しいのですが、ちょっとウスターソースを足すともっと美味しく食べられます。私はよく昼ごはんで食べます。
赤天とは違うの?
島根県浜田市名物の赤天と頻繁に間違われることがありますが、全くの別物です。
赤天は、魚のすり身に唐辛子や食紅を入れて赤くし、それに赤い衣をつけて揚げる練り物です。
また、赤天は戦後まもなくして、ハムカツをイメージした商品です。三宅水産は戦後に創業されたらしいのですが、がんすは100年以上の歴史があるらしいです。うーん、どういうことなのでしょうか。
広島がんすと赤天の違い
広島がんす | 赤天 |
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三宅水産が発祥?
三宅水産のある広島県呉市広町は、数多の商人が蒲鉾屋をしているという広島県屈指の蒲鉾の聖地です。そのためか、呉市民の多くは練り物アイラブユーという状態です。
そんな中、三宅水産創業者である「三宅惣一」を含めた蒲鉾屋の大将らが、「なじみのある商品にしたいんじゃ」と言い、ただの練り物ではなくインパクトのある練り物を作りたいと『がんす』の発案・開発が始まりました。
さらなる進化を求めて
三宅水産創業者の三宅惣一は、自社の『がんす』に「美味しいが後引くインパクトが欲しい」と、甘くて美味しい玉ねぎを様々な材料から選び抜きました。
ただ、玉ねぎは腐りやすいので腐敗が進みます。そのため、その腐敗をどうにか防げないものだろうかと悩んでいました。
その悩みを解決するものは、『キムチ』にありました。
広島県呉市広町などの呉市には、終戦後に日本に帰化された韓国の方が多くいます。その彼らが日常的に食べられていたのが『キムチ』です。
キムチが腐らない大きな要因は、殺菌作用と保存の効果がある『唐辛子』が含まれているからなのです。
そのため、『がんす』を作るときに『唐辛子』を魚のすり身と合わせることにしたわけです。
そんな苦労に苦労を重ねて作った『がんす』は、当然、旨味も多くとても美味しかったので、広島県呉市広町と中心として呉市内ではメジャーな食べ物として根付き、おやつ・お弁当・おつまみとして手軽に食べられるおかずの定番となりました。
『がんす』を広島県全土へと広めた『がんす娘。』
元々は呉市のみでのメジャーな食べ物でした。しかし、広島市ではとてものマイナーな食べ物でした。
そんな「マイナー食べ物」を一躍メジャーにしたのが『がんす娘。』です。
『モーニング娘。』を模して、『~娘。』と名付けられた広島県呉市広古新開にある蒲鉾屋の娘・三宅結花が扮する『がんす』のリアルゆるキャラです。
がんす娘。の活躍もあり、広島県全土の居酒屋などでもよく見る一般的な食べ物となり、広島名物へとなりました。
『がんす』の名前の由来
広島弁の「~でがんす」から来ています。
意味は、「~です」「~でございます」で、目上の方に対して使う謙譲語で最も丁寧な言葉として使われていました。
また、備後・安芸方言の特徴を「備後ばぁばぁ安芸がんす」と揶揄する表現もあったり、藤子不二雄Ⓐの漫画「怪物くん」に登場するオオカミ男が使っていたり、広島県のローカル番組「元就。」でアンガールズ田中が決め台詞で使ったりしています。
そして以前は、『がんす』という名称を魚肉練り製品として有限会社松岡水産(広島市西区)が商標登録していましたが、加工水産物の商品名として三宅水産(呉市広町)が商標登録しています。
ちなみに、私も日常でリアルに使っている人には会ったことありません。使っている人、いるんですかね?
最後に
今回は、私もよくお昼ごはんで食べる『がんす』を取り上げました。
今回の記事では呉市の三宅水産が発祥として書きましたが、実は以前に広島市西区草津の人に、「がんすは草津が発祥なんだ」と聴いたことがあります。
他の広島の人に聞くと、「あー、呉市とも草津ともいうね」という感じでした。実際は、どちらが発祥なのでしょうか、という感じです。
確かに、草津は草津港があることもあり、ヤクザも近寄らない漁師町として有名なところです。そうのように考えると、漁師が魚が痛む前に、すり身にして『がんす』を作ったというのも十分に有力なように感じます。
真実は闇の中なのかもしれませんね。
ちなみに、草津の『がんす』は坂井屋が有名です。